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化石燃料と渋谷の温泉事故

私は、学生時代に地質調査をかじった経験があります。
その経験からすると、どうしても腑に落ちない世の中の常識がありました。

それは、「石油や石炭は、化石燃料だ」という常識です。
化石燃料という意味は、石油は海の生物の死骸のなれの果て、石炭は陸上植物のなれの果て・・・だということです。

私が学生時代に調べたのは、新生代第三紀の亜炭の層を含んだ地層でした。亜炭は、湖に沈んだ木や葉っぱが酸素の少ない淡水の中で、バクテリアに二酸化炭素と水に分解されること無くそのままの形で堆積物に埋もれ、長い年月のうちに高温高圧の中で炭化したものです。
炭素の量はそれほど多くなく、いわゆるキラキラした質の高い石炭とは縁遠いものです。

ちなみに熱帯雨林は石炭にはならないと思います。バクテリアの活動が活発で、植物が死ぬとすぐに二酸化炭素と水に分解されてしまうからです。

質の悪い亜炭ですら、上記のように、淡水湖が長い間存在し、温帯で周りに木が多い・・・という特異な状況でしか生成されないのに、世界の使用量の数百年分といわれる石炭の埋蔵量は、いったいどういう自然環境下で、植物の死骸の蓄積がなされたのか・・・・・。そんな古環境があったとは、私にはどうしても思えませんでした。


次に石油ですが、石油は海の生物の死骸のなれの果て・・・といいます。

でも、そんなに炭水化物の生き物の死骸がが海の底にたまるなんていうことは、私には信じられません。生物が死んだら、バクテリアによって、それこそあっという間に二酸化炭素と水に分解されちゃいます。

実際、現在の海の底で、炭水化物の動植物の死骸が降り積もって腐葉土のようになった黒い海底なんてあるんでしょうか? 私は知りません。現在の海にはないけれど昔の海にあったというのは、どうも説得力はありません。

というわけで、毎日何百万トンと採掘されるような石油になる、生物の化石がどうやったらできるのか、皆目わかりませんでした。



そして最近、もうひとつ腑に落ちない事件がありました。

渋谷の温泉汲み上げ施設のメタンによる爆発事故です。

関東の地下1000メートルの基盤近くには、温泉とともに大量のメタンガスがあるというのです。
基盤というのは花崗岩などの硬い岩石です。その上に新生代の火山灰質の堆積層があるのが関東平野です。基盤とその上の堆積層は、当然のことながら不整合です。大昔に隆起して、地上にあがり、侵食されて岩盤がむき出しになり、その後沈降して、こんどは、堆積層がその上にたまったわけです。

基盤近くのメタンは昔の植物の死骸が変化したものだといいますが、不整合面にそんなものがあるとは思えません。

地質をやってる人にとっては、不整合面の上は粗い砂や礫であることは常識です。海に沈降した初期にたまる堆積物ですから、粒は粗いのです。現在でいうと沈降海岸(リアス式海岸など)の海底にたまった砂のようなものです。海岸の砂を掘っても、炭素が豊富な黒土は出てきません。

つまり、不整合面のすぐ上の層に生物起源のメタンガスがたまるのはありえないことなのです。
メタンのように軽いものが、さらにその上の層から下に降りるなんてことも考えられませんし・・。


そんなようなことを考えていたときに、ふと思い出したのが、昔、少し聞いたことがある、石油は無機物起源だ・・という説です。

ちゃんと調べてみようと思い、探したら、トーマス・ゴールド著「未知なる地底高熱生物圏」という本に行き当たりました。

これは・・・・これは、すごい本でした。

読んだら目からウロコ。やっぱりそうだったかー! という膝ポンの連続です。なんで出版されたときに読まなかったか・・・と、とても悔やまれました。


詳しいことは長くなるので書きませんが、要約すると以下のような感じになります。

・石油や石炭は地中のメタンが変質したものだ。
・メタンは、木星の大気にメタンが含まれていることからわかるように、宇宙に大量に存在する分子である。実際隕石のなかからもメタンは見つかる。
・地球ができたとき、このメタンは地球内部に大量に封じ込められた。
・地球ができたばかりのころは、全球がすべて溶けてドロドロになったわけではない。
・現在も地下深くには大量のメタンが存在し、地殻の割れ目などを通して少しずつ上昇している。
・石油や石炭に生物の痕跡が見えるのは、地下で石油や石炭を食べて生きている微生物によるもので、石油や石炭が生物起源であるわけではない。

上記のようなことがいちいち納得できる証拠を挙げて説明してあるんです。
一応地質をかじった人間として、石油、石炭が生物起源じゃない・・・とするほうが、つじつまがあう・・と、確信しました。


古くは、地動説、最近では大陸移動説が、地球の常識をひっくり返しました。

そして今度は、近いうちに、石油、石炭は地球形成期に取り込んだメタンが起源である・・・というのが、新しい常識になるのではないかと思います。

トーマス・ゴールドの名前は、記憶しておいたほうが良いと思います。